【読書徒然】vol.4 明日に向かって撃てのブッチとサンダンスはどうなったのか?「パタゴニア/ブルース・チャトウィン
先日、ロバート・レッドフォードが映画俳優を引退するというニュースを見た。
そのニュースでは、ポール・ニューマンとの交流エピソードなどが紹介されていたが、昔テレビで見た、ポール・ニューマンとの共演作品である「スティング」「明日に向かって撃て」などが思い出された。昔は映画を放送する番組が多かったのだ。淀川長治さんの日曜洋画劇場、水野晴郎さんの水曜ロードショー、高島忠男さんの「ゴールデン洋画劇場」他、週に3回は映画の放送があった。
「明日に向かって撃て」は、第42回アカデミー賞では、撮影賞、脚本賞、作曲賞、主題歌賞に輝いた作品で、ストーリーは、実在の銀行強盗ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドとその恋人エタ・プレイスの3人がモデルで、ブッチをポール・ニューマンが、サンダンスをロバート・レッドフォードが、エタをキャサリン・ロスが演じていた。
特に自転車で遊ぶシーン、追い詰められたラストシーンのストップモーションシーンなどは名シーンとして何度もテレビなどで紹介されていたので記憶に刷り込まれている。
自転車で遊ぶシーンに挿入される主題歌「雨にぬれても」は、この曲が流れればこのシーンという感じで、もう完全にワンセットになっている。
また、ラストシーンは、それを見た当時は、私自身、知識がなかったことや、随分昔にみたため、記憶もおぼろげで、てっきりアメリカだと思っていたのだが、どうやら南米だったようだ。
なぜ、そのことに気付いたかといえば、ブルース・チャトウィンの書いた紀行文「パタゴニア」を読んでいたときに、彼らのことが出てきたためだ。どうやら、ボリビアやアルゼンチンに彼らのことが記録として残っており、今でも語り継がれているらしいのだ。
そのくだりも含め、チャトウィンの書いたこの紀行文「パタゴニア」は非常に面白い。
紀行文というのは、書き味が自分の好みに合い、しっくりくれば非常に面白い。その書き味は書き手自身の持つ性格、雰囲気で随分変わる。そういう意味では、自分にはぴったり合った書き味だったのだろう。
また、パタゴニアの作者チャトウィンは誰とでもすぐに打ち解ける性格のようで、出会った多くの人がチャトウィンに興味深い話を気軽に教えてくれ、それを瑞々しい文体で書ける人だったようだ。ブッチとサンダンスの話のように...。個人的には非常に好みにあった文体だったので、本屋で何気なしに選んだのだが、一気に読めてしまった。
また、別の機会にでも書くつもりだが、チェ・ゲバラが革命家になる前に書いた紀行文「モーターサイクル・ダイアリーズ」も 書き味はパタゴニアに通じる印象だ。
書名:パタゴニア (ISBN 978-4309464510)
ジャンル:紀行文
著者:ブルース・チャトウィン(Bruce Chatwin)
1940年イングランド生まれ。ロンドンで美術鑑定や記者として働く。パタゴニア行きを経て、77年本書を発表し、20世紀後半の新たな旅行記の古典として高い評価を得る。ほかに『ソングライン』『ウィダの副王』『ウッツ男爵』『黒ヶ丘の上で』『どうして僕はこんなところに』など
訳者:芹沢真理子(せりざわまりこ)
1953年大阪生まれ。訳書のB・チャトウィン『ソングライン』『ウッツ男爵』、K・ブラウワー『サタワル島へ、星の歌』、G・レオナード『サイレント・パルス』など