余話徒然

余話を徒然に書いていくブログ。本についての感想の「読書徒然」などをメインに。

【読書徒然】vol.7 リーマンショックから10年、振り返りに最適な・・・「世紀の空売り/マイケル・ルイス」

アメリカの大手投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻した、いわゆるリーマンショックから明日9月15日で10年ということで、この何日かは新聞でも、その振り返り記事が掲載されている。実際、「もう10年たったのか」というのが率直な感想だ。

 

当時、破綻に関する記事で、リーマンショックのそもそもの原因であるサブプライムローンという言葉を知ったのであるが、その本質までしっかりとわかっていたのか?というとそうでもない。

 

そこで、10年をきっかけに、もう一度、と思い立ち、今、再読したのが、マイケル・ルイスの書いた「世紀の空売り―世界経済の破綻に賭けた男たち 」という本だ。マイケル・ルイスメジャーリーグのGMビリー・ビーンの手法を書いた「マネー・ボール」で有名だが、この「世紀の空売り」はマネーボールに劣らず、非常に面白い。

サブプライムローンとは信用力の低い低所得者向けの住宅ローンで、アメリカでは、サブプライムローンの貸し手である銀行がそのローン債権をひとまとめに証券化し高金利で運用できる金融商品として販売するようになっていた。その中でサブプライムローンの抱える問題点に気づいた一部の人間が、市場の破綻を予測して莫大な利益を上げるという内容なのだが、サブプライムローンの本質、特にそれに対する投資銀行たちの欲望、いい加減さというものがリアルに伝わってくるのだ。

このように書くと、儲けた人間が悪く伝わってしまっているかもしれないが、そうではない。本質は、いい加減なまま、自分のメリットだけを求め、その危険性を無視し、責任を放置し、被害を顧客に転嫁してきた、従来の投資銀行の非道さというものにあるのだ。

10年たった今、この本を読むことをおススメする。今ならきっと、俯瞰的な視点で見る事ができ、当時は理解できなかったことも理解できるだろうし、今の世情がはたして健全であるのか?ということを考えるきっかけにもなるだろうと思う。

 

この作品もまた、マネー・ボールと同様、映画化もされている。映画のタイトルは「マネー・ショート 華麗なる大逆転」で、監督はアダム・マッケイ、主演はクリスチャン・ベール。その他、出演俳優としてブラッド・ピットなど。第88回アカデミー賞では、脚色賞を受賞している。機会があればそちらも見てみたいものだ。