余話徒然

余話を徒然に書いていくブログ。本についての感想の「読書徒然」などをメインに。

【読書徒然】vol.8 今年を振り返るにはまだ早いかしれないが 「幻魔大戦/平井和正」

いよいよ平成が終わりに近づき、今年を振り返ると、例年に比べ、何かの変わり目という感じのニュースが多かったように感じられる。台風、大雨にしても異常気象ともいえるようなもので、地球温暖化の進行がいよいよ大きな影響を伴いものになってきたか?と思えるようなものであったり、世界の動きでは初の米朝首脳会談が開催されたりなど数多くあった。事件ではやはり、オウム真理教死刑囚の死刑執行だと思う。日本どころか世界をも震撼させた事件だったが平成という時代におこった日本での最大の事件だと思う。

 

オウムの事件がニュースで騒がれるようになった頃、そのニュースを見るたびに「まるで 幻魔大戦 じゃないか?」と感じたものだ。幻魔大戦とは平井和正によりSF小説なのだが、オウムでテレビに出てくるメンバーの雰囲気そのものが、幻魔大戦にでてくる組織「GENKEN」の雰囲気に重なって仕方がなかったのだ。小説では「GENKEN」はあくまでハルマゲドンに向けて皆の注意を啓蒙していこうという団体であり決してテロ集団ではないのであるが、来るべきハルマゲドンへの向き合い方から、テレビに出演している信者たちの雰囲気といい、すべてがドンピシャにはまっているのだ。オウムの出現を予言していたかのようにも思える小説なのだ。

今は古本やkindleでしか読めないかもしれないが、当時は文庫全20巻(1巻あたりのページ数はそんなに多くなく、20巻といっても大ボリュームという感じはない)で、最初の3巻ぐらいが、東丈(あずまじょう)を主人公としたスーパーサイキック(超能力者)達の超絶バトルであった。この部分は後にアニメ映画となっており、その映画の製作者たちの顔ぶれも、監督が、りんたろう。キャラクターデザインが大友克洋。声の出演が古谷徹小山茉美池田昌子原田知世美輪明宏江守徹。音楽がキース・エマーソン。というすごい顔ぶれだった。

ところが、3巻で超絶バトルにいったん区切りがつき、4巻以降、これからくるであろうハルマゲドンに向け備えていくという展開になると、この小説の雰囲気が突如変わり、まるでオウムという組織の出現を予言したのではないかという感じのストーリーになってくるのだ。

3巻までのスーパーサイキックたちの戦いというシンプルで分かりやすかった話が、なんだかまわりくどく観念的な話になるので、「なんだこりゃ?」という感じるのだが、ハマると、4巻以降は非常に面白く感じられるのだ。むしろ、個人的には4巻以降が好きで、この部分こそ、この小説の本質だと思えるのだ。

 

また、オウムのメンバーたちもこの小説を読んでいたのでではないか?と思わせる雰囲気をもった小説で、この小説が彼らになんらかの影響を与えたとするならば、そういう意味では功罪をもった小説なのかもしれない。

 

幻魔大戦には続きがあり、この20巻の終了後、「真幻魔大戦」が出るのであるが、舞台が外国へと移り、オーソドックスなSF小説へと戻る。ただし、アイデアが枯渇してしまったのか、ストーリーが途中まで進んだところで、後続の巻が出ずに終了というか立ち消えになってしまった。その後、再開して完結したのだろうか?真幻魔大戦も非常に面白かっただけに、途中までしか読めていないのが心残りなのだが、再開して完結していたのであれば、改めて読んでみたいと思う。